Radial Oncology Treatment

肝がん治療における
Radial approach TACEの将来の役割

虎の門病院 肝臓センター 内科
川村 祐介 先生

矢嶋 純二 先生

複数の背景リスク因子をもつ患者の増加で低侵襲なTACE手技へのニーズが高まる

TACE(Transcatheter Arterial ChemoEmbolization)は、一般的にBCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer)のStaging System1)においてIntermediate stageで推奨されている治療法です。当院では初発肝がんの約26%にTACEを施行していますが、そのうちIntermediate stageで行われたのは56%でした。その他は肝機能が悪い方、リスク因子を持つ患者などで、実際にはVery early stage、 early stageを含むかなり広い範囲でTACEが選択されていると言えます。これは、日本では高齢化が進んでおり、AMI既往歴、抗血小板薬服用による内出血のリスク、COPD、肥満等の背景リスク因子が複数ある患者さんが増えていることから、TACEのような低侵襲治療のニーズが高まっているためであり、今後さらに重要な位置づけになると考えられます(図1)。また、高齢になると1日寝ているだけでも筋力が減少がおこり、それ自体が全身状態の悪化につながる場合もありますので、術後の安静時間は短ければ短いほど良いというのが基本的な考えです。この点、早期に離床できるRadialのアクセスは、高齢で合併症のリスクの高い患者さんにとって価値があると考えます。

初回診断時にIntermediateよりも軽いステージでTACEを施行された55例の背景

図1 初回診断時にIntermediateよりも軽いステージでTACEを施行された55例の背景

術前に血管走行を確認し適した症例を見極めることが大切

当院では、Radialアプローチを選択する際、大動脈弓の蛇行や総頚動脈・腕頭動脈の起始部の位置を事前に確認し、適した症例であるかどうか判断しています。

症例動画1 a) の症例は下行大動脈に向けてガイドワイヤーがスムーズに進められていますが、 b) の症例は下行大動脈の前半でガイドワイヤーがたわみ、押す力が大動脈弁の方へ逃げて上行大動脈側にガイドワイヤーが落ち込んでしまっています。たわみが発生している分、血管との接触も増えて抵抗が強くなるため、カテーテル操作が非常に難しくなります。特に手技を始めて間もないうちは、 a) のようなアプローチのしやすい症例を選択して施行すると良いと思います。

症例動画1 Radial approachでより安定したUltra to Super selective TACEを狙うための症例選択

術前に適した症例を判断するポイントとしては、すでに脳血管治療において用いられている、動脈硬化に伴う大動脈の蛇行・延長の程度の分類を参考にすると、図2のように血管の起始部から大動脈弓の頂点までの距離でTypeⅠ~Ⅲまで分類できます2)。このうちTypeⅠのような症例がRadialアプローチのTACEに最も適しており、この手技を最初に始める場合は、必ず血管走行を確認し、特にTypeⅢのような症例は避けるべきだと考えます(症例動画1参照)。

動脈硬化に伴う大動脈の蛇行・延長の程度の分類

図2 動脈硬化に伴う大動脈の蛇行・延長の程度の分類2)

症例動画2 Radial approachでより安定したUltra to Super selective TACEを狙うための症例選択
Radial TACEに適した症例を見極めるポイント

長期的に繰り返し治療が必要なTACEでは患者希望を考慮したより負担の少ない治療選択を

鼠経アプローチでは治療後の安静・臥床のために、治療翌日元気のない患者さんも多いのですが、Radialアプローチだと患者さんは帰室後すぐに歩けますし、自分でトイレにも行けて洗面もできるので、非常に満足度が高いです。当院で初めてRadial TACEを施行した医師も、当日患者さんが病棟ですぐ歩いているのを見て驚いていました。用手圧迫止血がない点で、患者さんだけでなく術者にとっても負担が少なく、患者・術者ともにストレスを軽減した治療法だと言えるでしょう。治療目的にもよりますが、TACEを繰り返し行うようなケースでは、治療の選択肢を複数備えておくことは患者・術者双方にとっても一つの強みになるかと思います。実際に治療のレベルが鼠経アプローチと同等の場合は、患者さんの希望を優先させるために本人にどちらが良いかを聞いて選択することもあります。鼠経アプローチで夕方に治療を行う場合、止血解除が翌朝になってしまうため、患者さんから治療翌日に腰が痛いと言われた経験も多々あります。。このようなことを回避するためにも、Radialアクセスを選択肢として持っていることは大切だと考えています。

Reference:

  1. 1)

    Forner A, et al. Lancet. 2018 Mar 31;391(10127):1301-1314

  2. 2)

    İnanç Y,et al. Neuropsychiatr Dis Treat. 2017 Dec 20;14:29-35

著者はテルモ株式会社より原稿執筆料・監修料等を受領しています

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