Radial EVT(R2P System)

R2P症例のスクリーニングポイント

―アクセスルート評価の重要性

総合東京病院 循環器内科
滝村 英幸 先生

滝村 英幸 先生

より低侵襲なEVTを目指すためRadialアプローチを導入

EVTにおけるFemoralアプローチは広く行われていますが、穿刺部合併症を抑制し予後の悪化を防ぐためにも、穿刺部の選択は非常に重要となります。FemoralアプローチでEVTを施行した22,226例での、27,048回のインターベンションを解析した米国の研究1)では、3.5%に穿刺部合併症が認められました。そのうち重度の合併症が認められた患者においては、リハビリテーション施設や他院への転院や、ナーシングホームへの退院が必要となったケースが多い(リハビリテーション施設/他院に転院:22.1%、ナーシングホームへ退院:15.8%)、予後についても30日後死亡率が高い(6.1%)など、Femoralアプローチの侵襲性が課題であることが考えられます。当院でも、従来からFemoralアプローチでの穿刺部合併症を低減し、より患者負担の少ない手技を行うため、エコーガイド下穿刺などの安全対策を重視してきました。そうしたなか、近年では高齢者に対するEVTも増加傾向にあることから、より侵襲の少ないアプローチ法として、Radial EVTを導入しました。

R2Pがもたらすメリットと使いどころ

Radialアプローチを可能とするR2Pシステムは、穿刺部の止血が比較的容易なため穿刺部合併症の軽減につながることが期待できます2)。また、術後の安静や尿道カテーテル留置が不要であり、患者負担の軽減にもつながります。一方で、病変部へのアクセスルートにおいて血管内壁にある血栓やプラークを飛散させてしまうと、脳梗塞や腹部の血管塞栓、腸管壊死などの合併症を起こすリスクがあります。そのため、こうした合併症を予防するうえでは、大動脈の蛇行がないこと、鎖骨下動脈や大動脈に血栓やプラークがないことを術前のスクリーニングで確認することが非常に重要です。こうした合併症のリスクを念頭に置き、血栓やプラークの飛散に注意しながら症例を選べば、特にFemoral困難例などはR2Pの良い適応としてメリットが大きいと考えます。

Radialアプローチのメリット

  • 止血が比較的容易
  • 術後安静時間の短縮3)
  • 尿道カテーテル留置が不要

R2Pの使いどころ

  • 狭窄病変
  • 大動脈の蛇行がない
  • 鎖骨下動脈および大動脈にプラークがない
  • Femoralアプローチが困難な症例

R2P症例のスクリーニングポイント

当院で行っているR2P症例のスクリーニングポイントを紹介します(図1)
まず、術前CTとMRAにより病変部位の形態を評価し、バックアップが必要な症例かどうかを判断します。病変部位がSOS(Simple lesion、Open vessel、Short lesion)であればR2P施行可能と判断しますが、慢性完全閉塞病変(CTO)ではR2Pのみのワイヤリングが難しいため、Femoralから4Frのシースを挿入してIVUSを進めつつ、Radialからステントを進めていくなど、双方向のアクセス方法をとっています。
次に、アクセス血管の評価を行います。Radialアプローチでは病変部だけでなくアクセス血管の評価も行いますが、この工程が最も重要です。アプローチは左のRadialの方が大動脈壁に当たる箇所が少ないと考えます。鎖骨下動脈や大動脈に問題なくアクセス可能かを評価するために、CTや経食道エコー(TEE)を用いて周辺動脈のプラークの状態を把握します。大動脈にプラークが多い症例や、頸動脈高度狭窄がある症例(図2)では、Radialアプローチは特に慎重に行うようにしています。脳梗塞の既往がある患者や、図3のようなShaggy aortaが認められる場合は、Femoralアプローチを選択しています。
R2Pでスムーズにカテーテルが進まない場合や、バックアップが弱いときには、逆行性アプローチとしてFemoralアプローチの準備も必要です。穿刺部の選択は、それぞれのアプローチのメリット・デメリット、脳梗塞のリスクを患者さんに説明した上で判断していただいています。

図1 総合東京病院におけるR2P症例のスクリーニングポイント

総合東京病院におけるR2P症例のスクリーニングポイント

図2 プラークと狭窄の状態の確認

エコーで頸動脈に50%以上の狭窄が認められる症例では、大動脈全体にプラークが形成されている傾向にあり、RadialアプローチによるEVTは慎重に行う

Radial適応となる症例

a) プラークの無い状態

Femoralを選択した症例(Shaggy aorta)

b) 大動脈全体にプラークが形成されている状態

図3 経食道エコーを用いた大動脈の評価

経食道エコーで大動脈壁にShaggy aortaが認められる症例では、カテーテルにより粥腫が飛散してしまう可能性が大きいためFemoralアプローチを選択する

a) Radial適応となる症例

b) Femoralを選択した症例(Shaggy aorta)

症例提示

Distal Radial Approach(DRA)穿刺で腸骨動脈にEVTを施行した症例です(図4)。DRA穿刺の際は、安全を担保するためにエコーガイド下での穿刺を徹底しています。

図4 病変部およびアクセスルートの評価

病変/術前CT

病変/術前CT

右腸骨動脈に蛇行があるが、Misagoは柔軟性があるためステントを留置しても血管が進展されずにステントが追従すると判断した

頸動脈

頸動脈

鎖骨下

鎖骨下

狭窄が椎骨動脈より末梢にあるため問題ないと判断した

まずシースを挿入し(Glidesheath Slender:7Fr)、スティッフタイプJ型ガイドワイヤー(Radifocus)を造影用カテーテルで進めていきました。当院では、Radialアプローチでは留置したシースをあまり動かしたくないので、Destination Slender ではなくGlidesheath SlenderとSlenGuideの組み合わせで全例施行しています。鎖骨下動脈で狭窄を認め、造影確認をしたところ、狭窄は椎骨動脈より末梢であったため問題ないと判断し、そのままカテーテルを進めました。造影用カテーテル(IMA形状)が病変部を越すようにもっていき、ガイドワイヤーでバックアップを取りながら、SlenGuideを病変部まで進めました。
なお、Slenguide先端の位置を決めるにあたり、当院ではインナーガイドをいれたまま、先端をSlenguideの中まで引き、インナーガイドのワイヤールーメンから造影し、位置を確認した後に抜去をするようにしています。そうすることでSlenguideの位置を修正する際にインナーガイドを再度入れる必要がありません。
ステントはMisagoを使用し、フロッピータイプのガイドワイヤーを通してIVUSで位置を確認し、前拡張を行ってステント留置しました。Misagoステントは柔軟性があるため、屈曲した腸骨動脈でも血管への追従が良く、位置合わせがしやすいと感じます。ステント留置後はIVUSと造影剤で確認し、手技を終了しました(図5)。

図5 手技の実際

a) 鎖骨下動脈の造影

b) カテーテル挿入(下行大動脈)

c) 病変部造影

d) ステント留置(Misago)

e) 確認造影

まとめ

当院では正確な穿刺のために全例エコーガイドで穿刺し、なるべく細径のデバイスやシースを意識的に使用しています。アプローチ部位としてはDRAを取り入れるなど、さらなる低侵襲治療を積極的に実践しています。
より低侵襲なEVT実現のための1つの手段としてR2Pを実施していますが、施行にあたっては安全面の確認が非常に大切です。低侵襲であることを担保するためにも、術前評価、特にアクセスルートの評価をしっかり行うことが重要であると考えています。

Reference:

  1. 1)

    Daniel O, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2014 Dec;7(6):821-828.

  2. 2)

    Meertens MM, et al. J Endovasc Ther. 2018 Oct;25(5):599-607.

  3. 3)

    Schussler JM. et al. Proc (Bayl Univ Med Cent). 2011 Jul;24(3):205-9.

著者はテルモ株式会社より監修料を受領しています

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